放置すれば脳梗塞・心筋梗塞のリスクも…〈糖尿病予備軍〉が今日からすべきこととは?医師が解説

糖尿病予備軍が今日からすべき運動

生活習慣病のひとつである糖尿病は、日常的な食事や運動・喫煙・飲酒・ストレスなどの生活習慣が深く関与して発症する疾患です。

糖尿病は、いわゆる日本人の三大死因であるがん・脳血管疾患・心疾患、更に脳血管疾患や心疾患の危険因子であると認識されています。

糖尿病予備軍の場合には、糖尿病を予防することに力を注ぐ方が結果的に医療費を含めた社会保障費も抑えられると考えられています。

糖尿病予備軍の人にお勧めする運動としては、軽い散歩、ジョギング、水泳などの有酸素運動が効果的です。

強度としては体感的に楽にできる〜ややきついと感じる程度で、ゆっくりと十分に息を吸い込みながら全身の筋肉を使うことを意識してください。

また、腕立て伏せ、腹筋、スクワットなどの軽い筋トレも合わせて行うことで、より効果を高めることができます。

ややきついと感じる運動の脈拍目安は、50歳未満では100〜120拍/分、50歳以上では100拍/分未満が目安です。

運動を習慣づけることで、血糖値の低下やインスリンの働きの改善だけでなく、減量効果、高血圧や脂質異常症の改善、心肺機能や体力向上、ストレス解消などの副次的な効果も期待できます。

糖尿病予備軍が今日からすべき生活

糖尿病予備軍の方にとって、糖尿病への発症予防は生命予後の改善を望めるのみならず、健康寿命を延伸させるためにも必要不可欠なキーポイントです。

糖尿病予備軍の方が、糖尿病にならないようにするためには、良好な周囲環境や生活基盤の形成が重要であり、生活習慣病対策の効果的な推進のためには常にその変化に着眼しながら企画、実行、検証、評価という一連のサイクルを展開していく必要があります。

2型糖尿病になる前の段階を、「予備群」や「境界型」と呼び、糖尿病予備群でも心筋梗塞や脳梗塞などになりやすいといわれており、注意が必要です。

糖尿病予備群では、生活習慣の改善により糖尿病の発症のリスクを減らすことができます。

食事は腹八分目でやめる、野菜を積極的に摂取する、散歩などの運動を少しずつでも始める、禁煙する、健康状態の確認のために健診を受ける、ストレスと上手につきあうなどをに取り組むことで、脳梗塞や心筋梗塞などの病気のリスクを減らすことにもつながります。

糖尿病予備軍が今日からすべき食事

糖尿病予備軍の方が、行うべき食事療法のひとつが、腹八分目にすることです。

「あともう少し食べたいかな?」と感じるくらいが腹八分目とされていて、腹八分目を習慣にすることで過剰摂取を避け、体には適切なエネルギー摂取量となります。

また、食品の品目はできるだけ多く摂取することで、バランスの取れた栄養を食事から摂り入れることができます。

摂取カロリーを減らしやすくするために、揚げ物や脂肪を多く含む肉類の摂取は控えめにして、1日3食を規則正しく摂取しましょう。

野菜、海藻、きのこなどの食物繊維の多い食品を意識的に摂ることで、食後の血糖値の上昇を抑えるだけでなく、コレステロール値を下げる効果、食べ過ぎを防ぐ効果なども期待できます。

そして、ゆっくり噛んで食べることで満腹中枢が働き、食べ過ぎを防ぐことができます。

食事以外の糖質の摂取により血糖値が高い状態が続いてしまうと、糖尿病になるリスクが上昇する恐れがあるので、菓子やジュースなどの糖入り飲料に含まれる単純糖質の間食を避けましょう。

まとめ

これまで、糖尿病予備軍が今日からすべき生活習慣などを中心に解説してきました。

糖尿病は現代の疫病ともいわれ、糖尿病予備軍まで含めると全人口の約3割程度が発症していると考えられており、体内のインスリンと呼ばれる血糖を一定の範囲におさめる働きを担っているホルモンが十分に働かずに血中に存在するブドウ糖が増加する病気です。

糖尿病予備軍は、空腹時の血糖値が100mg/dL以上、または食後2時間後の血糖値が140mg/dL以上で、糖尿病と診断される基準には達していない状態です。

血糖値が高い状態が続くと、血液中に多量に存在するブドウ糖が血管の壁を傷つけて動脈硬化が進行して、心筋梗塞や脳卒中のみならず目や腎臓、神経領域にも十分な血液が供給されませんので網膜症や腎機能傷害、そして末梢神経障害などを引き起こします。

糖尿病予備軍から生活習慣病のひとつである糖尿病に進行させないことは重要な命題です。日々の暮らしの習慣の中で特に運動と食事などの生活スタイルを実施することが出来れば、糖尿病予備軍にとって有効的な対策になる可能性があります。

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。

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