移動薬局車「モバイルファーマシー」では災害時に調剤を行える【クスリ社会を正しく暮らす】

【クスリ社会を正しく暮らす】

「モバイルファーマシー」をご存じでしょうか? キャンピングカーなどを改造し、調剤を行うための設備を備えた「災害対策医薬品供給車両」です。車内には医薬品棚があり、多くの医薬品が積載可能です。

また、調剤台、小型分包機、医薬品冷蔵庫、電子天秤、クリーンベンチなど薬局としての基本的な機能が備えられています。他にも、バッテリー、発電機、給水タンクなどが搭載されているため、ライフラインが途絶えた状況下でも自立的に薬局としての機能を果たし、被災者へ医薬品を供給することが可能です。

能登半島地震においても、全国から13台のモバイルファーマシーが被災地に入り、支援活動を行いました。私も珠洲市に派遣された際、地元の広島県薬剤師会のモバイルファーマシーで活動し、その車内で2泊しました。

キャンピングカーを改造しただけあって冷暖房は備え付けられているのですが、床が非常に冷たくて1泊目は凍えながら夜を明かしました。2泊目は断熱シートを床に敷き、比較的快適に過ごすことができました。電気も使えるので、電気ポットでお湯を沸かし、温かい食事も取ることができました。

モバイルファーマシーは、薬局等構造設備規則から薬局としては認められていません。薬剤師法で「薬剤師は薬局以外で調剤してはならない」と規定されており、災害時に災害処方箋の調剤を行うことはできますが、通常の保険処方箋を取り扱うことはできないのです。近隣の住民が「ここなら無料で薬を作ってくれるんでしょ」と、通常の保険処方箋を持って来られたケースもありましたが、もちろんお断りさせていただくことになりました。

ちなみに、災害処方箋による調剤を行った場合、県などからの費用の支払いが遅くなるケースが多く、嫌がる薬局も多いと聞いていました。しかし、石川県内では災害処方箋を進んで受けてくれる薬局もあり、とても素晴らしいことだと感心しました。

(荒川隆之/薬剤師)

2024-04-21T00:45:35Z dg43tfdfdgfd