【7月7日は「ドリカムの日」】『大阪LOVER』『朝がまた来る』も…届かない願い、叶わない夢も丸ごと包んで歌うDREAMS COME TRUEは“やっぱり強い”

1989年のデビューから今年で35周年を迎えたDREAMS COME TRUE。1990年代からミリオンヒットを連発し、ボーカルの吉田美和とベースの中村正人の2人編成になった後も勢いは衰えず、昨年開催された4年に一度の大規模ライブイベントでは全国で40万人以上を動員して話題となった。そんなビッグアーティストが歌ってきた楽曲の「意外な魅力」について、ライターの田中稲氏が綴る。

【写真】『大阪LOVER』でも歌われた大阪・道頓堀の様子

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今年もやってきた織姫彦星七夕の日。私の近所の橋には、6月下旬あたりからすでに、たくさんの短冊が飾られていた。ヒーローになりたい。健康でありたい。両思いになりたい。マジックペンで黒々と文字に込められた願いは、普段澱んでいる川をきれいにするほどのパワーを感じる。一言一言が本当に尊い!

そして、日本には「夢が叶う」という名を冠する、とっても縁起のいいアーティストがいる。DREAMS COME TRUE、略してドリカム!

七夕のこの日は、2016年に一般社団法人・日本記念日協会により「ドリカムの日」と認定・登録されている。一年に一度夢が叶うとされる七夕と、ドリカムの相性が良いのは当然だ。

ただ、ドリカムが沁みるのはむしろ、願いが叶う喜びより、「願う一瞬一瞬」を歌ってくれるからだ。

映画の主題歌になった『7月7日、晴れ』(1996年)という曲があるが、これも「必ず会える」ではなく「あいたくて」「あえなくて」と繰り返す。それがいい。

私がそれに気づいたのは、かなり後なのであるが。

苦手だった曲でもサビを歌える自分に驚く

思い出せば、1990年代はあらゆるところでドリカムが流れていた。そのブームたるや、「90年代がドリカムを連れてきた」と言っても過言ではないほど。

シングルだけではなく、アルバムを出せばメガヒット。特に『MILLION KISSES』(1991年)、『The Swinging Star』(1992年)、『LOVE UNLIMITED∞』(1996年)は当時恋をしていた人全員が持っていたレベル。

友人とカラオケに行けば必ず誰かがを歌った。特に『未来予想図Ⅱ』の人気はすさまじく、アルバム収録曲にもかかわらず、アルバムを持っていない私も歌詞を覚えてしまったほどだ。

この曲でドリカムが広めたのが、車のブレーキランプをチカチカチカチカチカと5回点滅させ「ア・イ・シ・テ・ル」と伝える、ラブシグナルである。

ポケベルの「14106(愛してる)」と並び、なんとも尊い90年代特有の愛の表現。令和でも流行らせたい。運転免許がある方、レンタカーでもいいので、ぜひ実行してほしい。きっと喜ばれるぞ!

ちなみに私はチカチカの体験どころか、車所有者と交際したことがない。なにより、90年代は、ドリカムが苦手だった。あまりにも“リア充”の香りが強かったからである。

特に9thシングル『Eyes to me』(1991年)はガツンと来た。がじゅまるの木陰、ハルニレ、つゆ草と、なんかこういい感じの草木の名前を絶妙に織り込み、恋の喜びを朗々と歌ってくる吉田美和さんにおののいてしまったのだ。

彼女の背後にはっきりとイエローの光が見えた。「これがオーラってやつなのか……」。私には、ヒットチャートを圧席し、まさにドリームカムトゥルーしている彼女の姿が眩しすぎた。

『うれしはずかし朝帰り』『決戦は金曜日』『あなたにサラダ』『うれしい! 楽しい! 大好き』——。苦手だ苦手だと言いながら、これらのハッピーソングすべて、サビを歌える自分に驚いている。ドリカム、強い。

『大阪LOVER』女の子の「その後」を想像してしまう

私は大阪在住なので、38thシングル『大阪LOVER』(2007年)を避けて通るわけにはいかない。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(略してユニバ)のアトラクション「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド」のために作られた楽曲で、とてもかわいい東京と大阪の遠距離ソングだ。

東京在住の女の子のほうが愛強め。一緒に住みたいから、大阪に来いって言ってほしい……という思いを、不慣れながら関西弁で語る歌詞がいじらしい。「大阪のおばちゃんになりたいんよ」とまで迫る積極性もナイスだ。

リリースから17年が過ぎた今、猛アピールした女の子のその後を想像してしまう。

同棲、もしくは結婚し、「あかんがな」とか「知らんがな」とか、すっかり関西弁をモノにし、「ほんまに大阪のおばちゃんになってもうたわ、しもた〜!」と自虐ネタまで飛び出すくらいに染まっているかもしれない。

そして、彼は相変わらず「そやなぁ」が口ぐせで、彼女に引っ張られ、通天閣やユニバでデートしていたらいいな、と思うのである。

「願いは届かない」と歌う『朝がまた来る』

昔リア充ソングと思っていたドリカムだが、冒頭で記した通り、改めて歌詞を見ると、意外に「願いが叶っていない」状況であることが多いことに気づくのである。この『大阪LOVER』もそうだ。女の子が必死で、男の子は生返事のまま終わる。『やさしいキスをして』(2004年)の孤独感もすごいし、もとに絶対戻らない「喪失感」をはっきり描いていたりもする。

23thシングル『朝がまた来る』(1999年)では、「願いは届かない」という、言葉が繰り返される。

大切な人が二度と戻らない。そのどうしようもない思いが空に昇る日まで、ただただ、変わらぬ一日を過ごす。「頑張って乗り越えよう」「いつか忘れられる」ではなく、「今はこのまま」と歌うのである。

届かない願いがある。叶わない夢もある。悲しみを振り払わず、丸ごと包んで歌ってくれるドリカム。彼らの「夢が叶う」の定義は、(こうなりたい)思いが成就するだけでなく、(つらい)思いが静かに消えることも入っている。小さな祈りの積み重ねかもしれない。

今年でDREAMS COME TRUEはデビュー35 周年。7月26日より全国公開となる映画『カミノフデ 〜怪獣たちのいる島〜』では、主題歌を担当している。

曲のタイトルは『Kaiju』。雷鳴と雨音に乗せ、音楽MONSTERと呼ばれしドリカムが投げかける、「Kaijyu」という暗号——。

不穏さと、守られている感の両方がやってくるから不思議だ。

やっぱり、ドリカムは強い。

◆ライター・田中稲

1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。新刊『なぜ、沢田研二は許されるのか』(実業之日本社刊)が好評発売中。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。

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