X JAPANのHEATHさんは4カ月で急逝…大腸がんステージ4で延命できる可能性(中川恵一)

【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】

谷村新司さん(享年74)、もんたよしのりさん(享年72)、BUCK-TICKの櫻井敦司さん(享年57)など、人気ミュージシャンの訃報が相次いでいます。

先週は、先月29日に55歳で亡くなったX JAPANのHEATHさんについて、所属事務所が詳細を発表。それによると、HEATHさんの死因は大腸がんで、6月の診断から4カ月での悲劇だったようです。突然の悲劇にご家族や関係者は気持ちの整理がつかないかもしれません。

今回は、大腸がんについて紹介します。2019年の全国がん登録によると、大腸がんの罹患数は、男性が8万7872人、女性が6万7753人で、男女ともに2位。大腸がんは食の欧米化やメタボとも関係しているため、このところ急増しています。

毎年、便潜血検査を受けてがんになる前の良性ポリープのうちに見つければ内視鏡で切除し、がんを防ぐことが可能。たとえがんになっても、早期のステージ1なら5年生存率は99%です(全がん協加盟施設の生存率協同調査から。以下同)。胃がんのステージ1も5年生存率は99.5%で、大腸がんは胃がんと並んで、早期発見で治りやすいがんといえます。

ところが、HEATHさんは診断から4カ月での不幸です。診断時にかなり進行していたと思われます。ステージ4の5年生存率は23.7%。ステージ1より下がりますが、すい臓や肝臓、胃、肺などのがんは1ケタ台ですから、それに比べると、大腸がんは進行しても治療成績がよい結果になっています。

実は、ステージ4でも転移が少数なら、手術や放射線などを積極的に行うべきとされていて、切除などの治療がうまくいくと、生活の質を保ちながら延命できるケースが少なくありません。

ジャーナリストの鳥越俊太郎さん(83)は05年に大腸がんであることを告白。その後、肺や肝臓などへの転移の治療と合わせて4回の手術を受けながら、いまも活躍されています。

転移が治療できるくらいの少数か、治療が難しい多数かは、予測できません。HEATHさんは後者で、積極的な治療が厳しい状態だったのかもしれません。

前述したように大腸がんは、脂質の多い食事、野菜や果物の不足、運動不足などがよくありません。大腸がん予防には脱メタボの生活習慣が大切です。

飲酒については、国立がん研究センターの研究から、アルコール摂取量が多いほど高リスクになることが判明。1日のアルコール摂取量が15グラム増えるごとに、大腸がんリスクが約10%上がるとしています。アルコール15グラムは、大体ビール350ミリリットル分程度です。

1日のアルコール摂取量が92グラム以上(350ミリリットルのビール6杯以上)の人は、飲まない人に比べて大腸がんリスクは3倍に。酒好きの私にはつらいデータですが、適正飲酒とともに野菜や果物の摂取を心がけ、毎朝のジム通いを日課にして、大腸がん予防に励んでいます。

もちろん、大腸がん検診は、毎年必須です。

(中川恵一/東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授)

2023-11-18T00:48:51Z dg43tfdfdgfd