メラトニンは、主に脳の松果体から分泌されるホルモンです。
夜になると分泌が高まり、体内時計や睡眠・覚醒リズムの調節に関わっています。
「年齢とともにメラトニンが減るから眠れなくなる」と説明されることもありますが、中年期以降の睡眠の変化はそれほど単純ではありません。
とくに40代以降の女性では、加齢による睡眠の変化に加えて、更年期に伴う女性ホルモンの変動、ほてりや発汗、ストレス、生活習慣など、さまざまな要因が睡眠に影響します。
また、いびきや日中の強い眠気などがある場合は、睡眠時無呼吸などの睡眠障害が隠れていることもあります。
「最近眠れない=栄養が足りない」と決めつけず、睡眠の悩みが長く続く場合は医療機関に相談することも大切です。
トリプトファンは、体内で十分につくることができず、食事から摂る必要がある「必須アミノ酸」のひとつです。
体内では、
トリプトファン → セロトニン → メラトニン
という経路があり、トリプトファンはメラトニン合成の材料のひとつになります。
ただし、ここで注意したいのが、
「トリプトファンを多く食べれば、その日の夜にメラトニンが増えてぐっすり眠れる」わけではないということです。
メラトニンの分泌は、食事だけでなく体内時計や光の影響を強く受けています。
そのため、「朝にトリプトファンを食べれば14~16時間後にメラトニンになって睡眠の質が上がる」といった説明を、すべての人に当てはめることはできません。
トリプトファンを「睡眠のための特別な栄養素」として大量に摂るのではなく、たんぱく質を含む食品を日々の食事に取り入れることが基本です。
「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニン。
セロトニンの多くが消化管に存在することから、「腸内環境を整えればセロトニンが増え、それが夜にメラトニンになる」と説明されることがあります。
しかし、この説明には注意が必要です。
腸など末梢で作られたセロトニンは、脳と血液を隔てる「血液脳関門」を通過できません。
つまり、腸で作られたセロトニンがそのまま脳へ移動し、睡眠に関わるメラトニンになるわけではありません。
もちろん、食物繊維を摂り、腸内環境を考えた食生活をすること自体には意味があります。
ただ、「腸活をすればセロトニンが増えて眠れる」と一つのルートで説明しないことが大切です。
そこで今回使うのが、冷凍枝豆です。
枝豆は大豆を未成熟な状態で収穫したもので、たんぱく質を含み、その構成アミノ酸としてトリプトファンも含まれています。
日本食品標準成分表によると、冷凍枝豆の可食部100gには、次のような栄養素が含まれています。
大切なのは「トリプトファンだけ」ではありません。
枝豆なら、たんぱく質や食物繊維、ビタミン、ミネラルなど複数の栄養素を一緒に摂ることができます。
そして何より、冷凍枝豆なら一年を通して手に入りやすく、必要な分だけ使えるのが大きなメリットです。
「睡眠のために食べなければ」と考えるのではなく、普段の食事に豆類を取り入れる手軽な方法として活用してみましょう。
トリプトファンについては、「朝に食べるのがいい」と聞いたことがある人もいるかもしれません。
朝にトリプトファンのサプリメントを摂り、日中に明るい光を浴びることと夜間のメラトニン分泌との関連を調べた研究などはあります。
しかし、研究条件と普段の食事は同じではありません。
枝豆を朝に食べたから夜によく眠れる、夜に食べたら意味がない、と考える必要はありません。
むしろ、睡眠のリズムを整えるためには、次のような生活習慣も重要です。
冷凍枝豆は、朝食にも昼食にも夕食にも使えます。
生活に取り入れやすいタイミングで食べるのがいちばんです。
冷凍枝豆と豆腐を使った、ほぼ「混ぜるだけ」の簡単レシピです。
豆腐と枝豆はいずれも大豆由来の食品で、たんぱく質を摂ることができます。
そこに漬物の塩味と食感、すりごまの香ばしさをプラス。
朝食のトーストにのせたり、副菜にしたり、おつまみにしたりと、いろいろな食べ方を楽しめます。
※漬物には食塩が含まれるため、まずはそのまま味見をしてから、醤油を加えるか調整しましょう。
食パンにディップを塗り、チーズをのせてトーストします。
パンと組み合わせることで、忙しい朝にもたんぱく質をプラスしやすくなります。
クラッカーや薄く切ったバゲットにのせれば、手軽なフィンガーフードに。
小腹がすいたときの軽食にも使えます。
漬物を高菜にして、ラー油を少量加えればピリ辛のおつまみに。
ただし、睡眠が気になる人はアルコールにも少し注意を。
お酒を飲むと寝つきがよくなったように感じることがありますが、睡眠の後半が浅くなったり、中途覚醒が増えたりすることがあります。
「眠るための晩酌」にするのではなく、飲む場合も量を控えめにしましょう。
今回は、なめらかな食感を楽しめる絹ごし豆腐を使います。
よりしっかりした食感にしたい場合は、木綿豆腐に変えてもOKです。
木綿豆腐にするとディップというより白あえに近い食べ応えになるため、そのまま副菜として食べるのにも向いています。
水分が多く仕上がる場合は、豆腐を軽く水切りして調整してください。
トリプトファンは、メラトニンを体内でつくるために必要な材料のひとつです。
だからといって、枝豆を食べれば睡眠の質が上がるわけではありません。
睡眠は、食事・光・運動・体内時計・ストレス・年齢・ホルモンの変化・睡眠環境など、さまざまな要因によって左右されます。
とくに40代以降の女性では、更年期に伴って睡眠の悩みが現れることも珍しくありません。
食事を整えながら、起床時刻や光の浴び方、運動、寝室環境なども一緒に見直してみましょう。
「何を食べれば眠れる?」と一つの食品を探すより、毎日の食事を大きく崩さず、必要なたんぱく質や野菜、豆類などを無理なく摂ること。
冷凍枝豆は、そんな日々の食事を整えるために使いやすい食材のひとつです。
冷凍庫に一袋ストックして、いつもの食卓に気軽にプラスしてみてはいかがでしょうか。
松田 真紀
1972年、兵庫県生まれ。管理栄養士。日本抗加齢医学会認定指導士。アスリートフードマイスター3級。女子栄養大学卒業。株式会社バードワークス代表取締役。1994年、明治乳業株式会社入社。その後、電通など広告代理店勤務を経て、2014年、スポーツと健康に特化した「食プロデュース」を行なう株式会社バードワークス設立。自ら18才から15年以上20kgの体重増減、摂食障害に。苦しいダイエット生活の末辿り着いた、外食、コンビニ、レンチン、OK!ラクして食事を楽しむダイエットを提案する管理栄養士として300以上の施設団体など多方面で活躍中。著書『居酒屋ダイエット』(三笠書房)。趣味はトライアスロン、100kmウルトラマラソン、フルマラソン、全米ヨガアライアンス200習得中。
2026-08-30T09:38:56Z