「隠れ貧血」は正式な医学用語ではありませんが、ヘモグロビン値は正常でも、体内に蓄えられている鉄(フェリチン)が不足している状態を指して使われることがあります。
体内の貯蔵鉄の状態を知る指標の一つが、血清フェリチン値です。一般的な健康診断ではヘモグロビン値を中心に確認するため、貯蔵鉄が減っていても「貧血ではない」と判断されることがあります。
実際に私自身も、ヘモグロビン値は正常でしたが、頭痛やめまい、だるさなどの不調が続いたため、医療機関で検査を受けました。その結果、いわゆる「隠れ貧血」の状態でした。
食品に含まれる鉄には、肉や魚などに含まれる「ヘム鉄」と、大豆製品や野菜などに含まれる「非ヘム鉄」があります。
ヘム鉄は比較的吸収されやすい一方、非ヘム鉄は吸収率が低く、食事の組み合わせによって吸収されやすさが変わります。
朝食に取り入れやすい鉄を含む食品には、納豆、豆腐、枝豆、小松菜、しらす、卵などがあります。
ここで役立つのがビタミンCです。ビタミンCには、非ヘム鉄を吸収されやすい形に変え、体内への吸収を助ける働きがあります。
そのため、朝食で鉄を含む食品を食べるときは、ビタミンCを含む飲み物を組み合わせることが、鉄を効率よく摂るための工夫になります。
おすすめは、果汁100%のオレンジジュースです。オレンジジュースに含まれるビタミンCは、鉄を含む食品と一緒に摂ることで、非ヘム鉄の吸収を助けます。忙しい朝でも取り入れやすく、特別な調理が必要ないこともメリットです。
また、オレンジやキウイ、いちごなどを使ったスムージーや、小松菜やケールなどビタミンCを含む葉物野菜と果物を組み合わせたグリーンスムージーもおすすめです。
ただし、オレンジジュースやスムージーを飲むだけで、鉄不足が改善するわけではありません。鉄を含む食品と一緒に取り入れることが大切です。
果汁100%ジュースにも糖質は含まれるので、飲み過ぎには注意しコップ1杯程度を目安に取り入れましょう。
朝はコーヒーが欠かせないという方も多いでしょう。しかし、コーヒーや紅茶、緑茶などに含まれるポリフェノールは、植物性食品などに含まれる非ヘム鉄の吸収を妨げることがあります。
だからといって、これらの飲み物をやめる必要はありません。
鉄を含む朝食と一緒に飲むのではなく、食事とは少し時間をあけてから、コーヒーやお茶を楽しむとよいでしょう。
鉄不足対策というと、鉄分が多い食品ばかりに目が向きがちですが、「どんな飲み物と一緒に摂るか」も大切なポイントです。
朝食に果汁100%のオレンジジュースやビタミンCを含むスムージーを取り入れ、コーヒーやお茶は少し時間をずらします。
それだけでも、鉄を効率よく摂るための工夫になります。
夏は、だるさや疲れを暑さによるものと思い込みやすい季節です。
今年の夏は夏バテだけで片づけず、「隠れ貧血」の可能性にも目を向け、毎日の朝食を見直してみてはいかがでしょうか。
【参考文献】
・健康日本21アクション支援システム「鉄」
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
・NIH Office of Dietary Supplements「Vitamin C Fact Sheet for Health Professionals」
・National Academies「Dietary Reference Intakes: Iron」
國吉容梨子
管理栄養士。病院、保育園、行政での勤務を通して現場経験を重ねる中で、忙しさの中で自分の健康や心の余裕が後回しになっていることに気づき、働き方を見直すように。自分自身の暮らしも大切にしながら、誰かの役に立てる形を探し、現在はフリーランスとして活動中。3児の母としての実生活での気づきを活かしながら、特定保健指導や乳幼児健診での栄養相談、商品監修、コラム執筆など幅広く行っている。暮らしに根ざした視点で、“ちょうどいい栄養”を提案している。小さな工夫で、体も心もラクになる。そんな栄養のヒントを届けている。
2026-07-31T21:09:07Z